2026年歯科診療報酬改定の基本ポイント

2026年6月1日、歯科診療報酬改定が施行されます。今回の改定は、「賃上げ・物価対応」「口腔機能管理の充実」「医療DXの推進」を基本方針としており、歯科医院の経営に大きな影響を与えることになります。
本改定は令和8・9年度の2年度平均で本体改定率+3.09%と、過去数年と比較しても大きな改定となっています。特に、かかりつけ歯科医機能の評価強化と、デジタル化への対応が重要なポイントです。
この記事では、歯科医院経営者が最初に理解すべき基本ポイントを、実務的な視点から解説いたします。

1. 改定の全体像:3つの柱を理解する

今回の改定は、以下の3つの柱で構成されています。

第一の柱:物価・賃金・人材確保への対応
初診料が267点から272点へ、再診料が58点から59点へ引き上げられました。さらに、「歯科外来物価対応料」が新設され、初診時3点、再診時1点が加算されます。令和9年6月以降は、この加算がさらに倍増する予定です。
これは、診療所の経営環境が厳しくなる中での、診療報酬による支援措置と言えます。同時に、「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」の拡充により、スタッフの賃上げを支援する加算も強化されています。

第二の柱:かかりつけ歯科医機能の強化
口腔機能管理料が60点から90点へ大幅に引き上げられました。これは、単なる治療から「予防と管理」へのシフトを示しています。
同時に、「重症化予防連携強化加算」が新設され、糖尿病患者への歯周病治療に対して100点が加算されます。これは、医科との連携を強化し、全身疾患と口腔疾患の関連性に対応する医院を評価する仕組みです。

第三の柱:医療DXの推進
光学印象が100点から150点へ引き上げられ、CAD/CAM冠の大臼歯適用が拡大されました。さらに、チタンブリッジが新たに保険適用となり、3次元プリント有床義歯も新設されています。
これらは、デジタル化への対応を進めた医院に対する評価と言えます。

2. 収益増加の4つの機会

改定によって、以下の4つの主要な収益増加機会が生まれています。

機会1:口腔機能管理料の大幅増点
口腔機能管理料が+30点となったことは、定期的に患者さんを管理している医院にとって大きな収益増となります。特に、予防歯科に力を入れている医院では、この加算を活用することで、月間数十万円の収益増が期待できます。

機会2:光学印象の活用拡大
光学印象が100点から150点へ引き上げられたことで、デジタル化に対応した医院の収益が増加します。CAD/CAM冠の大臼歯対応拡大と組み合わせることで、より多くの患者さんに対応できるようになります。

機会3:新設加算の活用
医科連携訪問加算(500点)や口腔管理連携加算(600点)など、新設された加算が多数あります。これらは、医科との連携体制を整備した医院に対する評価です。特に、介護施設や病院との連携を進めている医院にとって、大きな収益源となる可能性があります。

機会4:チタンブリッジの保険適用
チタンブリッジが新たに保険適用となり、2,800点の診療報酬が設定されました。これは、従来は自費診療であった領域が、保険診療に組み込まれたことを意味します。患者さんの選択肢が増え、医院の収益も増加する可能性があります。

3. 対応が必要な5つの項目

改定に対応するために、以下の5つの項目について、早急に対応が必要です。

対応1:レセコン設定の変更
SPT(歯周病継続支援治療)とP重防(歯周病重症化予防)が統合されました。これに伴い、レセプトコンピュータの設定を変更する必要があります。6月1日の施行までに、必ず対応してください。

対応2:施設基準の届出
光学印象やCAD/CAM冠の大臼歯対応など、新たに対応する診療については、施設基準の届出が必要な場合があります。厚生労働省のウェブサイトで、最新の施設基準を確認し、必要に応じて届出を行ってください。

対応3:スタッフ教育
口腔機能評価や医科連携など、新しい診療内容に対応するためには、スタッフ教育が不可欠です。特に、歯科衛生士の教育を充実させることで、新設加算を活用できるようになります。

対応4:医科との連携体制構築
重症化予防連携強化加算や医科連携訪問加算など、医科との連携を前提とした加算が増えています。これまで医科との連携が少なかった医院は、この機会に連携体制を構築することをお勧めします。

対応5:DX対応
マイナ保険証への対応、電子処方箋への対応など、医療DXが急速に進んでいます。これらに対応することで、診療報酬の加算を受けることができるようになります。

4. 医院の規模別・診療科目別の影響

改定の影響は、医院の規模や診療科目によって異なります。

一般的な開業医院
初診料・再診料の引き上げにより、基本的な収入が増加します。同時に、口腔機能管理料の引き上げにより、予防診療の収入も増加します。これらの変化に対応することで、月間数十万円の収益増が期待できます。

矯正歯科
小児保隙装置が新設され、連続する3歯以上の先天性欠損歯を有する18歳未満の患者さんに対する矯正治療が保険適用の対象に追加されました。矯正歯科を行っている医院にとって、新たな患者層へのアプローチが可能になります。

訪問診療を行う医院
医科連携訪問加算や口腔管理連携加算など、訪問診療に関連する加算が大幅に増えています。訪問診療に力を入れている医院にとって、大きな収益増が期待できます。

5. 今後の対応スケジュール

改定に対応するためのスケジュールを以下に示します。

2026年4月~5月
レセコン設定の変更、施設基準の届出、スタッフ教育を完了させてください。

2026年6月1日
改定施行。新しい診療報酬で診療を開始します。

2026年6月~7月
新しい診療報酬での診療を実施しながら、問題がないか確認します。必要に応じて、さらなる対応を行います。

おわりに

2026年の歯科診療報酬改定は、歯科医院の経営に大きな影響を与えることになります。特に、かかりつけ歯科医機能の強化とDXの推進は、今後の歯科医療の方向性を示しています。
この改定に対応することで、患者さんにより良い診療を提供できるようになるとともに、医院の経営も改善される可能性があります。
ぜひ、この機会に改定内容を理解し、医院の対応を進めてください。

参考情報源
・厚生労働省 社会保障審議会 歯科分科会
・日本歯科医師会
・日本歯科医学会

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